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PART3では,源岩を@変成岩Aカリ長石を含まないトーナル岩 Bカリ長石を含む花崗閃緑岩に分け,それぞれの源岩ごとに,源岩からマイロナイトへの変化を系列的に示す.画像をクリックすると拡大画像と説明が表示される.
No.11露頭の試料No.03122211(泥質片麻岩)と,No.8-1露頭の試料No.03122302(マイロナイト)は,ほぼ同じ鉱物組成であったと考えられる.
No.11ざくろ石菫青石白雲母黒雲母片麻岩(縞状部)
試料番号0312221101(中央構造線からの距離1140m)
fig01a,b,c
No.8-1細粒ざくろ石白雲母黒雲母片麻岩源マイロナイト
試料番号03122302(中央構造線からの距離640m)
fig02a,b,c
fig02d,e
泥質片麻岩(fig01)は,ざくろ石と菫青石を含む.無色鉱物の大部分は石英であり,少量の斜長石を含む.白雲母と黒雲母は総体的には面構造と平行に配列している.ただし個々の雲母粒子の長軸方向は総体的な面構造から時計まわりにやや斜交している.なおfig01b〜cは,雲母類の消光位を避けるために,薄片を左回り(反時計回り)に少し回転して撮影した.
マイロナイト(fig02)は,肉眼では暗色細粒に見えるが,研磨片(fig02a)では,暗色の基質中にまばらに点在する長石ポーフィロクラストが認識できる.偏光顕微鏡鏡下(fig02b〜c)では,斜長石,カリ長石,ざくろ石のポーフィロクラストが認められる.菫青石は見られない.原岩に菫青石が含まれていたかどうかは分からないが,もし含まれていたとしても変質して失われた可能性が高い.白雲母と黒雲母がまんべんなく散在し,石英の粒径は小さい.なお,fig02b〜cは,雲母類の消光位を避けるために,薄片を右回り(時計回り)に回転して撮影した.
fig02d〜eは,マイロナイト面構造と写真の長辺とが平行になるように,薄片の回転を戻して撮影した.(高倍率)
基質の雲母類は,2方向に再配列している.雲母類の長軸の配列による面醸造(Sb面)は鉱物の配列がつくる面構造(S面)から時計回りに低角で斜交している.この面構造(Sb面)は,(S面)から反時計回りに低角で斜交する延性剪断面(Ss面)に切られ,結晶の先端は左回りに曲げられつつせん滅し,結晶全体としては紡錘形を呈している.Ss面沿いにも小粒径の雲母類が長軸をSs面
方向にそろえて配列している.この白雲母および黒雲母の長軸の配列により規定される面構造(Sb面)と,小剪断面(Ss面)の斜交関係から左ずれのセンスが読み取れる.Sb面とSs面の関係は,画像をクリックすると表示される.
大型で紡錘形の白雲母ポーフィロクラストは「マイカ・フィッシュ」と呼ばれ,その形態からも剪断のセンスが判定できる.
この試料では,再結晶石英集合体のプールが見当たらないため,その粒径による変形度の評価は困難である.しかし,この露頭は花崗閃緑岩を原岩とするポーフィロクラスティック・マイロナイトの露頭に挟まれており,両側の花崗閃緑岩源マイロナイトの変形度にちがいがないことから,これらと同じ温度圧力および広域剪断応力のもとで変形したと考えられる.
No.13マイロニティック中粒片麻状角閃石黒雲母トーナル岩
試料番号03122201,03(中央構造線からの距離1560m)
fig03a.b.c
fig04a.b
No.13露頭の試料No.03122201(fig03)と試料No.03122203(fig04)は,角閃石を含み,長石は斜長石のみからなる角閃石黒雲母トーナル岩である.
角閃石や斜長石には変形が見られない.黒雲母もほとんど変形していない.しかし石英には多結晶化が認められる.fig04bの自形斜長石下側の,拡大画像にQzの記号を付した石英は,再結晶石英集合体になっている.上部に褐簾石が見えるが,褐簾石もポーフィロクラストとして残りやすい鉱物種である.
No.10角閃石黒雲母花崗閃緑岩源プロトマイロナイト(優黒部)
試料番号03122214(中央構造線からの距離1030m)
fig05a.b,c
No.10露頭の試料No.03122214(fig.05)は,プロトマイロナイト・ゾーンの不均質な試料の優黒部である.褐簾石,角閃石,斜長石のポーフィロクラストの粒間を縫うように,多結晶化した石英が配列している.
No.8+2角閃石黒雲母トーナル岩源プロトマイロナイト
試料番号03122216(中央構造線からの距離720m)
fig06a,b,c
No.8+2露頭の試料No.03122216(fig06a,b,c)は,角閃石黒雲母トーナル岩を原岩とするプロトマイロナイトである.角閃石と斜長石がポーフィロクラストとして多量に残存している.ポーフィロクラストに取囲まれた領域の石英は細粒化しているが,再結晶石英集合体のプール全体の外形は原形を比較的保っているものもある.再結晶石英の最大粒径は0.4mmである.
この試料では薄片の部位により変形にばらつきが残り,機械的な破砕に弱いはずの黒雲母も原形に近い形で保たれているものがある.再結晶石英の最大粒径が0.25mmを超えるものが残存していることと,ほぼ原型をとどめる黒雲母が存在していることから,この露頭まで「プロトマイロナイト」に区分した.
No.6細粒角閃石黒雲母トーナル岩源マイロナイト
試料番号03122312(中央構造線からの距離510m)
fig07a,b,c
No.6露頭の試料No.03122312(fig07)は,トーナル岩を原岩とするマイロナイトである.研磨片(fig07a)のように,斜長石ポーフィロクラストに富み,面構造が顕著ではない.
薄片(fig07b〜c)では,細粒基質がポーフィロクラストの間を縫うように形成されている.中央右寄りの,角閃石ポーフィロクラストには脆性破断が生じ,周囲には緑簾石が生じている.
これらのトーナル岩を原岩とする試料どうしを比較すると,再結晶石英集合体の結晶粒径が,中央構造線に近づくにつれ系統的に減少している.
No.13-4細粒片麻状黒雲母花崗岩
試料番号03122207(中央構造線からの距離1320m)
fig08a,b,c
No.13-4露頭の試料No.03122207(fig08a,b,c)は,No.13露頭東方からNo.12露頭にかけてところどころに見られる黒雲母花崗閃緑岩〜黒雲母花崗岩の露頭のひとつから採取したものである.fig08cは,屈折率が低いカリ長石の周縁に見えるベッケ線を強調するために,焦点を少しずらして撮影している.
カリ長石の縁辺には細粒石英と斜長石からなるミルメカイトが形成されている(fig08c,高倍率).
No.10角閃石黒雲母花崗閃緑岩源プロトマイロナイト(優白部)
試料番号03122214(中央構造線からの距離1030m)
fig09a,b
No.10露頭の試料No.03122214(fig09)は,プロトマイロナイト・ゾーンの不均質な試料の優白部である.fig05の薄片は,同じ試料の優黒質な部分である.(高倍率)
この試料でも,カリ長石の周囲にはミルメカイトが形成されている.基質を構成する細粒石英・長石集合体の形成には,ミルメカイト化が関わっていると考えらる.生成された細粒石英と斜長石および残存するカリ長石片が帯状に配列している.
No.8花崗閃緑岩源斑状(ポーフィロクラスティック)マイロナイト
試料番号03122217(中央構造線からの距離670m)
fig10a,b,c
No.8-2花崗閃緑岩源斑状(ポーフィロクラスティック)マイロナイト
試料番号03122305(中央構造線からの距離620m)
fig11a,b,c
No.8露頭の試料No.03122217(fig10)とNo.8-2露頭の試料No.03122305(fig11)は,花崗閃緑岩を原岩とするマイロナイトである.
No.8露頭から道沿いにわずか50m北に位置するNo.8+2露頭の角閃石黒雲母トーナル岩源プロトマイロナイト(fig06)では,石英の粒径が不均一で,原形に近い黒雲母も残存していることを前節で述べた.しかし,こちらの花崗閃緑岩起源のマイロナイトは変形が均一で,再結晶石英の最大粒径は0.25mmを超えるものはなく,平均粒径も0.02〜0.1mmの範囲に収まっている.黒雲母も細粒化している.
ポーフィロクラストの両翼にはプレッシャー・シャドゥがみられる.プレッシャー・シャドゥに形成される再結晶鉱物は,細粒基質の平均的な粒径と比較して粒径が大きく不純物も少ないため,細粒基質の他の部分から区別できる.プレッシャー・シャドゥは肉眼でも白く見え,細粒黒雲母のため暗色に見える細粒基質中にポーフィロクラストから尾を引いたように見える(fig11a,12a).
これらの花崗閃緑岩を原岩とするマイロナイトでは,ミルメカイト化にともなって形成された無色鉱物からなる帯状部分とプレッシャー・シャドゥが連結して,暗色に見える部分と縞状をなす(fig11a).この細粒基質の縞状組織はフラクション・バンディングと呼ばれ,マイロナイト面構造を規定する変形組織のひとつである.
No.6+1花崗閃緑岩源マイロナイト
組成縞状構造(フラクションバンディング)が発達
試料番号03122309(中央構造線からの距離520m)
fig12a,b,c
No.6+1露頭の試料No.03122309(fig12)は,フラクション・バンディングがよく発達した花崗閃緑岩源マイロナイトである.やや風化したポーフィロクラスティック・マイロナイトでは,斜長石ポーフィロクラストは変質して白く濁って見えるのに対し,カリ長石ポーフィロクラストは透明感がある(fig12a).斜長石,カリ長石のほか,褐簾石のポーフィロクラストも存在する(fig12b〜cの拡大画像).
おそらく変形条件は同一と思われる近傍のトーナル岩を原岩とするマイロナイト(fig07)と比べると,花崗閃緑岩を原岩とするこの試料は,ポーフィロクラストの量比が少なく,フラクション・バンディングが発達し,面構造が顕著で,ずっと流動的な見かけを呈している.
No.13-2片状トーナル岩中の小剪断帯
試料番号03122205-01(中央構造線からの距離1410m)
fig14a,b,c
No.13-2露頭からの試料No.03122205-01(fig14)には,幅約1mmの脆性剪断帯が認められた.粉砕された基質中に源岩の黒雲母,長石,石英の破砕岩片が散在したカタクレーサイトが形成されている.源岩のマイロニティック・トーナル岩との境界は明瞭である.
この,後生の脆性小剪断帯は,源岩の黒雲母の配列を利用して形成されたように見える.
No.9含ざくろ石黒雲母花崗閃緑岩源プロトマイロナイト
試料番号03122215(中央構造線からの距離860m)
fig15a,b,c
fig15e,f
No.9露頭からの試料No.03122215(fig15)は,ざくろ石を含むが白雲母は見られない.fig15b〜cの上半部には細粒の黒雲母が多量に含まれている.細粒黒雲母と混在する領域では無色鉱物の粒径も小さい.黒雲母の長軸が連なってうねるように配列している.下半部には,中央の斜長石ポーフィロクラストの左下の周縁部のように,うねるような石英のバンドが見られる.この試料には,黒雲母の配列に沿って弱いカタクラスティックな破断が見られる.
一方,ほぼ石英のみからなり黒雲母を含まない部位(fig15e〜f)では,変形は一見あまり強くないように見える.
No.7含ざくろ石黒雲母花崗閃緑岩源マイロナイト(優白部)
試料番号03122307(中央構造線からの距離560m)
fig17a,b,c
No.7-1含ざくろ石黒雲母花崗閃緑岩源マイロナイト(優黒部)
試料番号03122308(中央構造線からの距離550m)
fig18a,b,c
No.7露頭からの試料No.00000107(fig16)は縞状の岩相である.試料No.03122230(fig17)は露頭の優白質な部分からの薄片である.これらの試料はざくろ石を含む.試料No.03122308(fig18)は,ごく近傍のNo.7-1露頭から採取した優黒質な部分で,角閃石を含む.優白部は全体に細粒で流動的な見かけを呈し(fig16a,17a),斜長石に富む優黒部はポーフィロクラストが密集して見える(fig18a).
No.7露頭の縞状の試料(fig16)からは,同一変形条件における,原岩の組成のちがいによる変形組織のちがいが明瞭である.
fig15f既出,No.9露頭からの試料No.03122215(中央構造線からの距離860m)
fig17c既出,No.7含ざくろ石黒雲母花崗閃緑岩源マイロナイト優白部(中央構造線からの距離560m)
一方,No.9露頭(MTLから860m)からの優白質試料(fig15f)とNo.7露頭(MTLから560m)からの優白質試料(fig17c)を比較すると,不均質な試料でもMTLに向かう石英の細粒化が明らかである.
No.3+1斑状(ポーフィロクラスティック)マイロナイト源カタクレーサイト
試料番号03122323(中央構造線からの距離220m)
fig18a,b,c
No.3+1露頭からの試料No.03122319(fig18)は,ポーフィロクラスティック・マイロナイトを原岩とするカタクレーサイトである.鏡下では,破砕岩片内部に、プレッシャー・シャドゥをもつポーフィロクラストと細粒基質からなるマイロナイト組織が確認される.
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